IT個人事業主になる フリーランス・エンジニアへの道

 フラン健史郎 | 2020/04/21 - 20:18
目次

    フリーランスとして活躍しているITエンジニアは非常に数が多いです。ITエンジニアにとってフリーランスという働き方は一般的と言っても過言ではありません。

    実際、フリーランス協会が発行した『フリーランス白書 2018』を読むと、“IT・クリエイティブ系”の仕事を主な収入源としている方が全体の約52%となっています。この中には、ITエンジニアだけでなく、Webデザイナーを含めたデザイナーさんも含まれているので、正確な数字は分かりません。

    ですが、仮にそのうち半分とすると、26%、つまり、フリーランスとして活躍する方の四人に一人はITエンジニアということになります。そして、フリーランス・エンジニアとして生き生きと働いている方の話を聞いて、自分もフリーランスエンジニア・エンジニアになりたい、と感じている方も多いでしょう。

    そこで、今回は、本格的にフリーランス・エンジニアとして働くためには、絶対に避けて通れない、「個人事業主化」、つまり開業届などの行政手続きのお話をしたいと思います。

    IT個人事業主とは? 正社員や派遣との違い

    そもそも論として、フリーランサーという働き方について、整理しておきましょう。

    フリーランサーはクライアントと業務契約を取り交わし、その内容に応じた、契約金・報酬を受け取ります。

    なお、フリーランサーの反対に位置するのが“給与所得者”です。サラリーマン(正社員)だけでなく、派遣社員やパート・アルバイトもお給料を受け取って仕事をしているので、給与所得者という括りになります。

    労働に対する対価を受け取る、という意味では、フリーランサーの契約金・報酬と、サラリーマンの給与は同じですが、まったく性質が異なるお金です。

    なぜならば、給与は、「事業者から、事業者と労働契約を結んだ個人へ支払うお金」ですが、フリーランサーの契約金・報酬は「事業者から業務契約を結んだ事業者へと支払うお金」だからです。

    意識していない方も多いと思いますが、開業届を出して、明示的に個人事業主になっている方はもちろん、開業届を出していなくても、フリーランスとして業務請負契約などの形でクライアントと契約し、仕事の対価を受け取っているならば、それは事業を営んでいる、ということになります。

    なお、フリーランスの方が個人事業主として開業届を出す義務はありません。しかし、一般的にはメリットの方が多いため、開業届を出すべきと言われます。次に、メリット・デメリットを見ていきましょう。

    IT個人事業主のメリットとデメリット

    ここでは、具体的な、フリーランス・エンジニアが開業届を出す、メリットとデメリットを見ていきます。

    ①フリーランス・エンジニアが開業届を出すメリット

    開業届を出して個人事業主になる最大のメリットは税優遇です。個人事業主になると、青色申告承認申請書の提出により青色申告を利用できるようになるのですが、これには非常に強力な特典が存在します。

    まず、“純損失の繰越控除”と言いますが、事業が赤字になった場合(経費から利益を引くと赤字になった場合)、その損失を翌年以降3年間に繰越すことができます。

    例えば、一年目は初期費用が掛かりすぎて、30万円の赤字、二年目は25万円の黒字、三年目は30万円の黒字だったとしましょう。この場合、二年目の税計算上の利益は繰り越した赤字と相殺されて0円になります。三年目の税計算上の利益も30万円―5万円(二年目の黒字で相殺しきれなかった、一年目の赤字)の25万円となります。

    他にも、“貸倒引当金”という制度も青色申告では利用可能になります。会計用語で“貸倒れ”と言いますが、事業を行っていると、貸したのに帰ってこないお金、仕事を完了させたのに振り込まれない報酬が発生するリスクが常につきまといます。

    通常なら“貸倒れ”が発生してから、「入ってくるはずのお金が入ってこなかった!」ということになるのですが、青色申告の場合、最初から、そのリスクを取り込んで、「これだけ損失が発生する予定」ということで、所得税を計算する根拠となる利益から、一定金額を除外することが可能になります(無制限に“貸倒引当金”が使えてしまうと、税金逃れに悪用されるので、利用には一定の制限があります)。

    平常時だと、フリーランス・エンジニアの方が「事業が赤字になる」ことはあまりないですが、「ITシステムを納品したクライアントからの支払いがない」ということは、まれにですが、発生します。筆者自身、約束の日になっても報酬が支払われず、知り合いの弁護士に請求の手伝いをしてもらったことがあります。

    また、IT業界にも2020年の新型コロナウイルスショックが波及しています。仕事が止まってしまったフリーランス・エンジニアも多く、“純損失の繰越控除”や“貸倒引当金”があって良かった、と感じる方が増えるのは間違いないでしょう。

    税制以外のメリットは屋号が持てる、という点です。

    「屋号なんて、なくても良い」という意見もありますが、屋号を冠した仕事用の口座を持っていると、“プロのフリーランス”、“一流のITエンジニア”に見えるので、クライアントからの信頼性が高まります。大手銀行で口座を作れれば、それだけで他のフリーランス・エンジニアと差が付けられます。

    ②フリーランス・エンジニアが開業届を出すデメリット

    開業届出書には一つ、非常に大きなデメリットが存在します。

    それは、開業届を出した時点で、一人の経営者となるリスクです。経営者になると、どのようなリスクがあるかというと、仕事が儲かるのも、仕事がなくなるのも「自身の経営努力次第」という論理が適用され、“失業”という概念がなくなります。

    “失業”という概念がなくなると、いわゆる失業手当など、失業者を対象にしたサービスは原則、受けられなくなります。

    開業届出書の申請

    ここまで、開業届を出すメリットとデメリットを見てきましたが、ここでは、実際にどうやって開業届を作成して提出するのかをご紹介いたします。

    「政府に提出する書類だから、面倒なのだろうな」とか「行政書士にお願いしなきゃならないのかな?」などと思った方、ご安心ください。拍子抜けするくらい簡単です。法律は専門外のITエンジニアでももちろん、大丈夫です。

    一枚紙(厳密には、提出分と控えの二枚)に、住所や氏名、事業内容などなど必要な情報を書いて、最寄りの税務署に提出するだけです。費用もかかりませんし、提出後、受理の審査などもありません。

    詳しくは国税庁のホームページ『[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続』をご覧ください。原紙もリンク先にあります。

    青色申告承認申請書の申請

    青色申告を行いたい方は、開業届出書同様に青色申告承認申請書を税務署に提出しておく必要があります。たいていの方は、二種類を一緒に提出するかと思います。

    こちらは本当に一枚紙に、住所や氏名、事業内容などなど必要な情報を書いて、最寄りの税務署に提出するだけです。やっぱり費用もかかりませんし、提出後、受理の審査などもありません。

    詳しくは国税庁のホームページ『[手続名]所得税の青色申告承認申請手続』をご覧ください。原紙もリンク先にあります。

    まとめ:本気でフリーランスになるなら開業届を出そう

    上でも書きましたが、ITエンジニアにとって開業届の提出は必須ではありません。絶対に出さなくてはならないものではありません。また、個人事業主になると、上でもご紹介した通り失業手当など失業者を対象にしたサービスは原則、受けられなくなるデメリットも確かにあります。

    しかし、いざとなれば廃業してしまえば良いのです。個人事業主の場合、廃業のハードルも低いです。

    開業届を出して、青色申告や屋号を利用できるようになると、フリーランスとして活動しやすくなるので、本気でフリーランスとしてIT業界で戦っていくのであれば、個人事業主になることを絶対におすすめします。

    今すぐシェアしよう!

    B!


    上部へ戻る