失業保険とは、失業者が職を失っている間、安定的な生活をできるようにするために、経済面からサポートする制度のことです。
失業保険を受け取るには、条件があります。退職すれば必ず受け取れる保険ではなく、条件に該当しなければ受給できないので、以下の説明をしっかりと確認しましょう。また、もらえる期間や収入についても解説します。
失業保険を受給するためには、以下4つの条件があります。
・離職前2年間に、被保険者期間が12カ月以上必要(倒産・解雇などやむをえない理由の場合、離職前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上必要)
・積極的に就職しようとする意思があること(仕事を探している状態)
・いつでも就職できる環境や能力があること(健康である、環境など)
・積極的に仕事を探しているにもかかわらず、職業についていないこと
失業保険は、雇用保険の被保険者(雇用保険に加入している労働者)である必要があります。
次の仕事を探している状態でないと、失業保険に頼りっぱなしで、職につくことなく生活を送る可能性があります。そのような状態になってしまった場合、失業者は一向に安定した生活を送ることができません。この手当の目的は、失業者が職を失っている間、安定的な生活をできるようにするために、経済面からサポートすることなので、自分で安定的な生活を送るために求職中である必要があります。
例えば、以下の人は対象外です。
・怪我や病気
・妊娠・出産・育児
・家事や学業に専念する人
・就職する意思がない人
のように、もし万が一職が見つかったとしてもすぐに働き始められない人や、そもそも仕事を見つける気がない人は、失業手当の受給はできません。
働く意思・能力があることが条件なので、すぐに働き始められない場合は対象外です。
失業保険の給付額は、年齢や退職理由などの理由に左右されるため、各個人によって受給額が異なります。
失業保険の基本手当日額は
基本手当日額=賃金日額(離職前6カ月の合計賃金÷180)×給付率(50~80%)
で算出できます。
基本手当日額と賃金日額は、年齢によって上限があります。
29歳以下=基本手当日額:6,815円/賃金日額:13,630円
30~44歳=基本手当日額:7,570円/賃金日額:15,140円
45~59歳=基本手当日額:8,330円/賃金日額:16,660円
60~64歳=基本手当日額:7,150円/賃金日額:15,890円
下限額は全年齢共通で、基本手当日額:2,000円/賃金日額:2,500円です。
給付率は50~80%に分かれており、基本的に賃金日額が高い人ほど、給付率は下がります。所得が低い人ほど安定的な生活を送ることは難しいです。そのため、高所得者の方が比較的給付率が低く、低所得者の方が給付率が高くなっています。
失業期間を受けられる期間は、最低90日~最大330日です。待機期間7日を過ぎた直後から計算されます。
期間は、退職理由が自己都合であるか会社都合であるか、被保険者期間、離職時の年齢で決定します。
・自己都合退職の場合
退職時の年齢が65歳未満の時
被保険者期間が10年未満=90日間
被保険者期間が10年以上20年未満=120日間
被保険者期間が20年以上=150日間
対して、会社都合退職の場合は、離職時の年齢や被保険者期間によって細かく日数が変わってきます。フリーランスを目指す方は多くが自己都合退職に当たると思うので、上の説明を参考にしてください。
フリーランスとして活動しながら失業保険を受給することは、不正受給にあたります。発覚した場合、保険金の返還と、厳しい罰則が与えられます。
フリーランスとして活動している人や、開業届を出している場合、フリーランスになるための準備申告をしなかった、などの行為は、不正受給に該当します。
失業保険は、求職者を経済面からサポートする手当なので、収入がある人は受け取れません。
不正受給をしても、「黙っていればばれないのではないか」という安易な考えは通用しません。実は案外簡単にバレてしまいますし、見つかる経路も多くあります。
正当な理由で給付を受け取っている人がいる中で、不当に受給する人がいれば、不平等です。そのため、ハローワークはこのような不平等を生まないように、徹底的な調査をしています。
・マイナンバーの納税履歴共有
マイナンバーが普及したことによって、複数の機関に登録されている個人情報の確認が簡単になったため、以前より足がつく可能性が高いです。
・退職した会社の社員や、会社訪問で記録参照を行っています。
・身の回りの友人
・一般の方からの通報
・ハローワーク社員の定期的な訪問
・ハローワークで面談時にうっかり話してしまう場合も…
・制度を理解できていない場合
失業保険の他にも、再就職手当というフリーランスの方でも受給できる手当があります。制度を理解していないまま話を進めてしまうと、気付いたら不正受給していた、ということがおこるかもしれません。基本的に、失業保険とは「失業者が職を失っている間、安定的な生活をできるようにするために、経済面からサポートする制度のこと」という目的を理解できていれば、勘違いを産むことは少ないと思います。しかし、万が一不正受給をしてしまわないためにも、失業保険について理解できていないところは、ハローワークの面談時に質問をして必ずその場で解消しましょう。
不正受給と認定された場合は、罰金として不正受給と認められた金額の三倍の金額の返済を求められます。なお、この三倍の金額に因んだ言葉が“三倍返し”です。返還が遅れた場合、延滞金を科されたり、財産の差し押さえなどが行われます。さらに悪質性が高いと認定された場合は、詐欺罪で逮捕、検挙される可能性も十分にあります。
「不正にお金をもらう」という行為を働いて、社会的にいいことはないので、そうならないように気をつけましょう。
フリーランスで活動しながら失業保険をもらうことは、説明した通り不正受給になってしまうので、正確にはフリーランスになることを決めている人が失業保険をもらう方法について解説します。
・雇用保険被保険者証の確認。
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入した際に発行される証明書で、基本的に会社で保管されています。転職して入社手続きをする際に必要になるので本人の手に渡ります。
・離職届けを受け取りハローワークに提出
“離職届”は、次の就職先が決まっていない状態で離職する従業員に対して、企業が発行するものです。この“離職届け”をハローワークに提出することで、ハローワークに初めて“失業者”と認識してもらえるのです。
離職票を受け取る
↓
ハローワークで受給資格を得る
↓
待機期間7日間を過ごす
↓
受給説明会に参加する
↓
失業認定日(失業である状態を確認する日)
↓
受給
退職したあとは、ハローワークに失業している状態と認めてもらう必要があります。離職票を受け取って受給資格を獲得しましょう。所定の手続きを踏んだ後、初めて受給できます。
フリーランスで失業保険を受給しようとする際、良くある質問を3つまとめました。
原則、失業保険は「保障」であって「所得」ではないため確定申告の必要はありません。課税の対象にもなりません。ですが、例外として申告をした方がいい場合があります。
確定申告をした方がいい場合は「年末調整をできていないケース」です。
例えば、年度途中で退職して、年末調整をする12月の時期に再就職をしていない人や、失業期間を経て再就職した人で、失業期間中の社会保険料などを年末調整に含めていない人などです。年末調整の時期に会社に所属していない場合、所得税を払い過ぎている時に変換される還付金を受け取ることができません。そのような時に、自分で確定申告をする必要があります。
失業保険を受給するためには、失業状態である必要があります。副業は、週に働ける時間の制限がありますが、その規定以下であれば失業保険を受給しながら副業をすることが可能です。
副業をする場合の規定
・1日4時間未満
雇用保険上のルールでは、4時間以上働いた日は「就労」扱いになります。対して、1日4時間未満の場合は「内職・手伝い」という扱いになります。
・週20時間未満
1週間で20時間以上働いてしまうと、失業保険を受給できません。
1日4時間未満、週20時間未満の規定内でしたら働くことはできますが、場合によっては認められないケースもあるので、ハローワークで相談しながら手続きを進めていきましょう。(不正受給を防ぐためにも相談は逐一することをお勧めします)
失業保険と再就職手当は、そもそもの目的が異なります。
失業保険は、失業者が職を失っている間、安定的な生活をできるようにするために、経済面からサポートすることが目的です。対して、再就職手当は早期に安定した職についてもらうために、再就職を促進するための制度です。
下記はフリーランスが再就職手当をもらうための条件や必要書類を解説した記事です。フリーランスでも再就職手当をもらえます!条件や手順などを徹底解説