プロジェクトマネージャーは、プロジェクトにおける統括責任者です。
主にシステム開発やアプリケーション開発などのプロジェクトにおいて任命されることが多いです。
エンジニアの種類として、技術系のほかにマネジメント系があります。
プロジェクトマネージャーは、まさにマネジメント系のエンジニアの代表といえる職種です。
プロジェクトの企画・立ち上げから、実行、終了までの、全ての局面を主導します。クライアントと交渉をしつつ、様々な職種のメンバーをまとめ、プロジェクト完了までのQCD管理を行っていくのがプロジェクトマネージャーのミッションです。
*QCD管理・・・Quality(品質)、Cost(予算)、Delivery(スケジュール、納期)の管理
プロジェクトマネージャーには、豊富な経験に加え、ITやマネジメントに関する知識や技術を持っているエンジニアが起用されることが多いです。
そのため、一般のエンジニアと比べて、プロジェクトマネージャーの年収は高めになっています。
マイナビエージェントによれば、平均年収は569万円となっています。ただ、20代では平均年収は468万円なのですが、30代になると612万円と大幅に増加する特徴があります。実績や経験が重視される傾向を読みとれます。
経験豊富かつ優秀なプロジェクトマネージャーであれば、年収が1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
高額な報酬が魅力的な職種ですが、プロジェクトの規模や内容にふさわしい実績や能力が求められますし、プロジェクトの成否に対して全責任を負うことになります。
参考:
プロジェクトマネージャー・プロジェクトリーダー|マイナビエージェント
プロジェクトマネージャーは、システム開発プロジェクトにおける責任者として、プロジェクトの立ち上げから予算や工数の計画、そして実行など、プロジェクトを遂行する際に必要なあらゆることを担当します。
PMBOKによれば、5つのプロセスグループがあります。
*PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、PMI(Project Management Institute)が作成した、プロジェクトマネジメントの基礎知識体系です。
具体的には、プロジェクトの立ち上げ段階では、クライアントの課題をヒアリングし、システム開発の目的や盛り込むべき機能や性能について明確にする要件定義を行います。その要件定義に基づいて、予算や納期などの取り決めを行います。
そこからプロジェクトの計画を作成します。開発全体を作業工程に応じて分割し、開発に必要な工数を決め、スケジュールを作成していきます。リスクなどの検討も行います。必要な作業環境を整備し、作業担当者を決め、プロジェクトを始動させます。
その後は基本的にはプロジェクトの進捗状況を定期的に確認しつつ、スケジュールどおりにすすめていきます。この部分は一番プロジェクトマネージャーらしく、イメージしやすい部分でしょう。ただ、プロジェクトに変更やトラブルはつきものです。こういった事柄に対してその都度臨機応変に対応し、なんとかQCDを保ち続けていきます。
プロジェクトが完了したらレビューを行い、プロジェクト完了報告書をまとめます。
プロジェクトマネージャーはプロジェクトに関する広汎な領域を担当するため、多種多様な能力が要求されます。
確かなITスキルと豊富な開発経験はもちろんのこと、交渉や社内調整を行うコミュニケーションスキル、さらにリーダーシップなども備えている必要があります。
マネジメント能力
まずはプロジェクトの予算や進捗、メンバー間の調整などを把握するマネジメント能力がが欠かせません。冒頭でも触れた、QCD管理のスキルです。
PMBOKによれば、9つのマネジメントがあります。
コミュニケーション能力
クライアント、プロジェクト参加メンバー、その他社内外の関係者との連絡役・調整役としての高いコミュニケーション能力が必要です。
クライアントからの急な仕様変更の要請に対応したり、メンバーの士気や体調にも考慮したり、社内からメンバーや予算を獲得したりなど、八面六臂の活躍を求められます。
立場の異なる2者間での対立の調整役にならなければいけない場面もあるかもしれません。人の意思や感情を読み取り、上手にコントロールできる能力が必須といえます。
ITスキル
ITスキルも求められます。たとえば、システムの使用目的や使用状況を勘案するとどのような技術を用いてシステムを構築すべきか、開発や実装の難易度を考慮するとどのくらいの工数になりそうか、などの判断をする際に必要になるような知識や経験です。俯瞰的なITスキルと言えるかもしれません。
システム開発関連技術の最新トレンドをフォローしておくことも大事です。
もちろん、具体的なプログラミングや機器設定などの現場レベルでのITスキルも、あればあったほうがいいでしょう。いわゆるプレイングマネージャーも珍しくありません。
リーダーシップ・人間力・精神力
プロジェクトに参加するメンバーを統率するスキルも求められます。この人についていこう、この人のためにがんばろう、と思わせる、ある種のカリスマ性のような能力ともいえます。
また、プロジェクトが予期せぬトラブルに見舞われたときにも冷静に対応し、プロジェクトの成功に向かって導いていく強い人間力や精神力が必要になることもしばしばです。
その他のスキル
多くの書類を作成したり、連絡事項を伝達したりします。文書作成などを効率的に行える事務処理能力が必要です。
会議などの場面で関係者間で情報を共有することも頻繁なため、プレゼンテーション能力も求められます。
プロジェクト全体を見渡し、隠れたリスクや課題を発見し解決する危機察知能力もあるとよいでしょう。
何らかの資格を保有していなければプロジェクトマネージャーの仕事ができないわけではありません。ただ、プロジェクトマネジメントの基本を一通り学べるのと、対外的に能力を証明できる材料になるという2点において、資格を取得する意味があります。資格取得が社内的に昇格の条件になっていたり、転職の際にプラス材料になることもあります。関連資格を2つご紹介します。
PMP試験
PMP試験は、米国の非営利団体であるPMIによって実施されている、プロジェクトマネジメントの国際資格です。プロジェクトマネジメントスキル評価の国際基準といえる資格で、試験問題はPMBOKの内容に沿って出題されます。
なお、受験料がやや高めです。
プロジェクトマネージャー試験(PM)
プロジェクトマネージャー試験は、情報処理技術者試験のひとつです。合格すれば、システム開発プロジェクトにおける基本的なマネジメント知識を保有している証明になります。
試験は、午前Ⅰと午前Ⅱ、午後Ⅰと午後Ⅱの4つあります。午前Ⅰと午前Ⅱはマーク式の四肢択一問題、午後Ⅰは文章問題です。最後の午後Ⅱがなかなかの難関で、2時間で2,000~3,000文字程度を記述する論述問題です。プロジェクトマネージャーとして経験した実例をふまえて論述する、というものですが、架空の設定でかまいません。
新しいシステムを構築するプロジェクト、しばらく運用したシステムを更新するプロジェクト、または新しいシステムに移行するプロジェクトなど、どの業界でも何らかのシステムに関連するプロジェクトは絶え間なく行われています。
基幹システムの構築からWebサービスやアプリの開発まで、プロジェクトマネージャーを必要とする分野は多岐に渡ります。特定の業界に限定されず、活躍できる現場は豊富にあるといえます。
ただ、金融や医療や製造など、そのプロジェクトを行う業界に関する最低限の知識を身につけておく必要があります。その業界特有の業務プロセスやルールなどを理解していなければ、システム開発はできないからです。
前述の通り、プロジェクトはこれからも常にどこかで行われていきます。プロジェクトマネージャーはそのプロジェクトの現場に求められ続けるでしょう。
特に大規模なプロジェクトを担当できる優秀なプロジェクトマネージャーは引く手あまたです。
部分的な業務はAI(人工知能)によって代替されるかもしれませんが、プロジェクトマネージャーの仕事全部がAIに置き換わる可能性は低そうです。
プロジェクトマネージャーには、プログラマーやシステムエンジニアからスタートし、プロジェクトリーダーを経てからなるケースが一般的です。
プロジェクトマネージャーになった後のキャリアパスとしては、プロジェクトの現場でプロジェクトマネージャーのスペシャリストになる道と、ITコンサルタントになる道に大きく2分されます。
ITコンサルタントはシステム開発の最上流の工程を担当します。顧客へのヒアリングを通じて経営課題を明らかにし、ITを活用してその経営課題を解決する専門家です。独立して複数の企業に関わる人もいます。
平均年収は、高額報酬のプロジェクトマネージャーをさらに50万~100万円ほど上回ります。
いずれの道を選ぶにしても、優秀なプロジェクトマネージャーやITコンサルタントは、いずれの業界の企業でも歓迎されることでしょう。
プロジェクトマネージャーについて見てきました。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの先頭に立ってプロジェクトの一連の工程をマネジメントする仕事です。システム開発に関連する広汎な知識と豊富な経験が要求され、その差配がプロジェクトの命運を左右します。
年収が高くやりがいもある仕事ですが、未経験からいきなりプロジェクトマネージャーというのはかなり難しいです。ITエンジニアとしてキャリアアップしていった先の将来的な目標のひとつとして意識しておくとよいかもしれません。
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