IT業界で活躍しているエンジニアの中には、「ヘルプデスク」と呼ばれる種類の仕事も存在します。「どんな仕事を担当しているのか?」「年収はどのくらいもらえるのか?」について気になる方もいるかもしれません。今回はエンジニア系職種の1つであるヘルプデスクの仕事・年収・将来性などを深掘りしていきます。
ヘルプデスクは、クライアントや社員の問い合わせに対してソリューションを提供する役目を担う職種です。システムの使い方やアプリを使う上でのトラブルに対応し、問題を解決に導くのが仕事です。
ヘルプデスクには、一般的に「社内ヘルプデスク」「社外ヘルプデスク」の2種類が存在します。
社内ヘルプデスクは、社内のIT部署やシステム管理部に在籍し、社員からの問い合わせに応える業務を担当します。社内で導入しているシステムの使い方や、エラー画面への対処、画面の操作方法のレクチャーまで、幅広い業務を担当することになります。
新しいパソコンやツールを導入する際には、本体のセットアップやインストールを手がけることもあり、ハード・ソフトを問わず幅広い知識が求められるポジションです。新入社員向けに初歩的なことを教えることもあれば、技術的なトラブルに対し専門的な知識を持って対処することもあります。
一方の社外ヘルプデスクは、その会社で提供しているアプリやサービスに関する、ユーザーやクライアントからの問い合わせを受け付ける職種です。顧客からの問い合わせに対応するコールセンタースタッフのような立ち位置になります。
業務内容が似通っていることから、コールセンタースタッフがヘルプデスクを兼任している例も珍しくありません。従来は電話・メールでの問い合わせ対応がメインでしたが、最近ではチャットを使ったリアルタイム対応を行なうところも増えてきました。
転職サイト「doda」の調査によれば、ヘルプデスクの平均年収は342万円。男性で354万円、女性は321万円というデータが得られます。20代で299万円、30代で367万円、40代になると423万円と経験年数に応じて報酬額がアップする傾向にあります。
IT業界全体の平均年収が456万円とされているので、平均よりはやや劣る数字と言えます。しかしヘルプデスクの仕事内容がコールセンタースタッフと似通ったものであることを踏まえ、コールセンタースタッフの年収額として考えれば平均的か、やや多めの年収額と考えられます。
また、ヘルプデスクの求人には未経験OKとされるものが多いことも、平均年収を押し下げている原因となりそうです。ヘルプデスクといっても、社内SEのように高度な知識・経験を必要とするものではないため、ある程度ITに関する知識のある人であれば未経験でも採用してもらえる可能性は高まります。
もっと高額な年収を得たいと考える場合には、まずは未経験でも入社できるヘルプデスクの求人に応募して、その会社の研修や実務を通じて得た経験を活かし、別のエンジニア系職種にジョブチェンジするという方法が考えられます。
未経験でシステムエンジニア・プログラマーといった職種に応募するよりも、ヘルプデスクの経験を身につけてからこれらの職種に応募するほうが内定を勝ち取れる可能性は高くなります。
サーバーエンジニアやネットワークエンジニアといった職種なら、ヘルプデスクの知識・経験がダイレクトに生かされてくる可能性も十分考えられますので、年収が低いからといって軽視すべきではありません。
イチからヘルプデスクを目指そうと考えるのであれば、IT関連の基本知識と、パソコンやOfficeソフトに関する操作スキルを身につけておくとよいでしょう。
たとえば、「ITパスポート試験」に合格しておけばITに関する一定の知識があると見なされますし、「マイクロソフトオフィススペシャリスト」の資格を取得しておくことで、Officeソフトの扱いに精通している人という評価を得ることができます。
また、趣味で自作パソコンを組み立てたことがあったり、さまざまなパソコン向けソフト・アプリを扱ったことがある人なら、その経験をアピールすることでヘルプデスクとして採用してもらえる可能性が高くなります。
また、社内ヘルプデスク・社外ヘルプデスクを問わず、多種多様な悩みを抱えた人からの相談を受ける立場になりますので、コミュニケーション能力は不可欠とされます。相手の困りごとを正確に理解し、見当違いのソリューションを渡してしまわないよう、理解力や共感力も求められるでしょう。
ITに関する知識はもちろんですが、こうしたヒューマンスキルも求められる立場であることを念頭に置いて、日頃からコミュニケーションスキルや共感力を高める努力を重ねるのがおすすめです。
ヘルプデスクはコールセンタースタッフとよく似た性質を持っているため、基本的にIT業界を含めたあらゆる業界で活躍することが可能になります。今やパソコンを使用せずに仕事をしている会社はそれほど多くないでしょうから、社内ヘルプデスクはどんな企業にも必要とされている職種といえます。
コールセンタースタッフとして勤務してもいいと考えるなら、メーカー・商社・運送・接客などジャンルを問わず採用してもらえる可能性があります。多くの候補の中から就職先を選ぶことができるので、希望の業界がはっきりしていない人にはおすすめです。
ただし、ヘルプデスクの経験を生かしてIT業界で今後活躍していきたいと考えるなら、迷わずIT業界で内定をもらえるよう努力すべきでしょう。ヘルプデスクとして採用された後、実績やスキルを買われて別の部署へ転属となるケースも考えられます。
また、IT業界の中に身を置くことで将来のキャリアビジョンを描きやすくなるほか、エンジニア系職種に携わる先輩とコネクションができる可能性もあります。こうした経験・人脈が後々役立つことも珍しくありませんので、積極的にIT業界を選びたいところです。
電話とメールが主流だった従来のコールセンター業務に代わり、AIを使った自動応答システムが、主にチャットでのカスタマーサポートで取り入れられるようになっています。チャットで困りごとを入力するだけで、それにマッチした回答やヘルプページを案内してくれるというサービスです。
現状はテンプレート化されたメッセージしか返信できないものがほとんどですが、AIが進化するにつれて、まるで本物の人間と同じようにメッセージのやりとりができるチャットサポートが誕生する可能性もゼロではありません。
そうした未来を前提とすれば、今後ヘルプデスクの需要は少なくなり、将来性に乏しいと思う人も出てくるでしょう。しかしAIであっても「いつでも頼れる人がいる」という安心感を代替することはできません。
生身の人間が相談に乗ってくれるヘルプデスクは、その市場規模が少なくなることはあっても、決してゼロになることはないでしょう。コミュニケーション能力に優れ共感力もあり、かつITに関する知識も十分に備えていれば、今後も必要とされる人物として評価され続けると思われます。
エンジニア系職種の中でも、コールセンタースタッフと似た性質を持ったヘルプデスク。ITに関する知識を活かして仲間の社員や顧客の困りごとを解決する、やりがいにあふれる職種でもあります。ヘルプデスクの経験を生かすことでキャリアップやジョブチェンジの可能性も見えてくるので、IT業界に踏み出す第一歩としてヘルプデスクを転職先候補として検討してみてもいいかもしれません。
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